
silje nergaard
最初、なんと読むか分からなかった。
どうやら、「セリア」と読むらしい。
ノルウェー人ということも、彼女の名前もネットで調べて知った。
耳に残っている"we sould be happier~"っていう曲の曲名が知りたくて、調べた。
記憶は嗅覚に残るという。
何かの匂いで、懐かしくなったり、何かの匂いがきっかけで自分が忘れいてたことを思い出していたり。
香りで、そのときのことをまざまざと思い出したり。
それと同じように、「音」もそうだと思う。
その音楽を聴くと、そのときのことを思い出して切なくなる。
そういう音楽が、生きていれば少しは出てくるものだ。
以前、惹かれた人がいた。
幾度かデートをした。
友達でもないし、恋人でもないけれど、彼の眼鏡の奥に隠れた繊細そうな瞳が好きだった。
デートのとき、彼の車でよく流れていたのは、彼女の声だった。
透明感があって、切なくて、そしてドライブの間の沈黙を心地よく埋めてくれた。
彼女の歌が耳に染み込んで、ときどきふと彼女の声が聴きたくなった。
彼に会ったときに、「この人は誰?」と聞いた。
彼は、カーオーディオからCDを取り出して名前を見せてくれた。
読めなくて、スペルを覚えて、ネットで調べた。
それが、silje nergaardだった。
明らかに私は彼のことが好きだった。
彼のことを知りたいと思った。
彼のことを分かりたいと思った。
でも、それにひたすらブレーキをかけていた。
彼の心がつかめなかったから。
傷つくのが怖かったから。
彼にとって「彼の前を通り過ぎていった女の子のひとり」なるのが悔しかったから。
私のことを好きになってもらいたかった。
彼は、私のことを好きかどうか「分からない」と言った。
悲しかった。
だから、「じゃあ、もう、会わない」と言った。
あのとき傷ついてもいいから、「好きだ」と言えばよかった。
自分の気持ちだけは伝えとけば良かった。
siljeの声を聴くと思い出す。
オーディオのスイッチを押す彼の長い指。
真っ直ぐな瞳。
シャツの香り。
そして、窓の外に広がる星空。
そのせいなのか、それともseljeの声のせいなのか、私は彼女の歌を聴くと物狂おしいほど切なくなる。
There is no tender way to say it's the end
~ I Don't Want To See You Cry ~

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